作久間シュンブン

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てんやわんやの年末年始

執筆日:2025年12月31日

執筆者:チャボ




















2025年の年末、俺はもち米を探していた。

正に100世帯分のもちを賭けて街中を飛び回っていたのである。




















いくら店長がおっちょこちょいだからといって、年末に売る伸し餅のためのもち米を買い忘れるとは思わなかったぜ。

店長も、お客にキャンセル出来ないかの電話をしたらしいが、全く取り合ってもらえなかったらしい。

そりゃそうだよ。だって発売の二日前だもん。




















そんなわけで俺は、こんな年の瀬近い日曜日にもち米を求めて街を走り回っているわけなんだ。

駅前のスーパー、コンビニ10軒、モールやディスカウントストアにも行ったけどダメだった。

やっぱり年末は家庭で餅を搗く人も多いから、300kgのもち米なんて簡単に買えるものじゃないぜ。


店長も米屋を回っているけど、全然ダメなようだ。




















もち米は見つからないし、買ったたい焼きはカラスに奪われるし、全くやってられねえぜ!




















不意に電話が。確認すると店長からのものだった。

どうやら米屋さんが、もち米を売ってくれそうな農家さんを紹介してくれたらしく、今からそこへ行ってくるのだという。

「12月29日の13時には帰るから、そこから仕込みをやろう!」という話だった。




「残業代は弾んでもらいますよ」と店長と会話をして電話を切った俺は、翌日12月29日のシフトを終えて店長の自宅でこたつにみかんでも食べながら待つ。

そして13時になって、300kgのもち米を持って店長が帰ってきた




















はずだった。




















約束の時間になっても店長が帰ってこなければ、何かしらの連絡も届いていない。




















13時半、14時、それでも帰還の気配はない。




















15時。

「店長、帰ってこないね」

営業シフトを終えてきたヤマトがそう話しかけてきた。




















「…どう思う?」

俺の問いかけに対し、ヤマトはエプロンを脱ぎながら上を見て、ニヤニヤした態度を取りながら答える。

「まだ1時間は帰ってこないよ」

「そうだよな…」

経験上、この感じだとあと1時間は帰ってきそうにない。

「う〜ん…」

俺は腕を組んで考え込む。

早く仕込みを始めなければ、明日の販売に間に合わなくなってしまう。




こんなことなら行き先の住所を聞いておくべきだったとため息を漏らす俺に、ヤマトは衝撃的な一言を言い放った。




















「僕、住所知ってるよ。」




















「いや、何で知ってるんだよ!」

その男は驚く俺を横目に、炬燵に潜って余裕で蜜柑なんか食べている。

「僕の情報アンテナの広さ、甘く見てたら痛い目見るよ?」

いや、コイツの情報収集能力の高さは前から知っていたけれど、そんな情報、無線の傍受でもしてなきゃ手に入らないだろ…!




埒が明かないので俺はヤマトから教えてもらった農家のヨネトシさんの所に行ってみることにした。




















着いた場所は東京圏から遥々、広神。

雪が降り積もっていて一面真っ白でマジ寒い!




玄関のチャイムを鳴らすと現れたのはヨネトシさんの奥さんだった。

「うちの店長来ていませんか?」と聞くと、

「今、うちの夫と息子もいなくて、一緒に出掛けているみたい。帰ってくるまで上って待っていたら?」と言われたのでお言葉に甘えて待つことに。




















お茶を淹れてくださったので飲むと、熱いお茶が寒さに冷えていた体の芯を温めてホッと一息つく。




それにしてもすごい美味いお茶だ!

渋みが少なくて、その代わりうま味がじわじわと広がってくる。

聞いたら、これは村上茶という新潟のお茶なんだって!

お茶なんて静岡とかの暖かそうな場所で取れる印象があったから、新潟産のお茶だって聞いてびっくり。

厳しい新潟の冬を乗り越えた村上茶はこういう苦味の少ない味になるんだって。




















あまりの美味しさに思わずおかわりをもらう。

やっぱり、田舎の食文化は都会で代え難いな。




受け取る際に俺が手を滑らせて覆してしまったことによって

奥さんに淹れていただいたおかわりのお茶が

掛かってしまったことが原因で

床の上の機械から上っている激しい煙を何とか止めようと

俺が色々とボタンを押したことによって

突如時空の歪みとともに顕れた穴の中に

店長はいた。




















どうやら、なぜか現実世界に戻ることができなくなってしまって四苦八苦していたらしい。

店長たちが「チャボのおかげで助かった!」と褒めてくれたが、俺が機械にお茶をこぼしたことは店長たちは知らないぜ。




















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